ゆうちゃんはなんでもなれる

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 今、私はなんかよくわからないきつねの絵本を読んでいる。絵本を読みながら、絵を指差して「これはなに?」と聞くから、なかなかページは進まない。 「パパはもうそろそろ勉強した方がいいって言うんだけど、私はちょっとまだゆうちゃんが遠くに行っちゃうようで嫌だなって」  三人の談笑を盗み聞きしつつ、絵本を進める。 「ゆうちゃん。ゆうちゃんは何にーー」  盗み聞きした話の内容のせいか、絵本を読み終わって私はゆうちゃんにある質問をしたくなった。 「いや、何でもないや。次は何したい?」  だけど、途中でやめる。  将来、何になりたい? って聞くのはなんだか野暮な気がしたからだ。  ゆうちゃんは少し不思議そうな顔をしたが、私の質問に対して特に気に留めず木製のキッチン台の玩具を指差した。 「おりょうり、つくりたーい!」  今のゆうちゃんは何だってなりたいものになれる。お城の建築家やアイドル、料理人だって簡単に。  私も少しの間だけお城の土台やアイドル、アシスタントになれる。  三歳はそんな魔法がある時期だ。
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