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【第1章】ワタシがカンジた絶望
「1番上が女の子かあ」
ワタシが生まれた時、祖父は残念そうにこう言ったらしい。
母は、自分の父親のその発言を、家庭内で何かストレスが溜まる度に、繰り返し繰り返し表に出してヒステリックに叫んで責めた。
父は忙しい人のようだった。
朝6時に起きて、帰宅するのは夜10時だ。
おそらく、「ブラック会社」というやつなんだろう。
仕事の疲れが酷いのか、父は休みの日に泥のように眠る。
土曜日が休みなのは稀で、1日中家に居るのは日曜日ぐらいだった。
そんな休みの日ですら、「あなたが安月給なせいでうちは貧乏なのよ!!」と母になじられる。
父が母を殴るのを、ワタシは何度か目にした。
泣くしかできない無力な自分が情けなかった。
祖父はそれを制止する役目だった。
母は祖父にさえ、前述のように喚き叫んで攻撃をするが、祖父はそれを慣れたものと受け流し、2人の間に入ってなだめるのが常だった。
祖母はというと、家事しかしない人で、家庭内に揉め事が起きてもオロオロするばかりで何の役にも立たなかった。
それでいて、調理場に「自分の空間」としての異常な拘りを持っていて、気に入らない事をされると怒ったり拗ねたりし、祖母自身が揉め事の発端になる場面もしばしばあった。
ワタシが生まれた2年後に、弟が生まれた。
祖父にとって待望の男の子とあって、「跡継ぎが生まれた」と喜んだらしい。
「継ぐような跡なんてないがね。資産どころかボロ屋になって処分が大変よ。」と、やはり母は吐き捨てた。
その弟は、小さい頃はワタシも可愛がっていたけれど、大きくなるにつれどんどん生意気になった。
勉強も運動も上位で、リーダーシップもあり、世間的にも評価される能力を持っていた。
「こいつは地域で一番の高校に行って、プロ野球選手になってほしい。」と、祖父は弟に夢を見ているようだった。
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