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「2人で昼飯食べるの久しぶりだな。」
「そうですね。」
「ん?腹減ってない?」
「いえ、いただきます。」
俺は目の前の蕎麦を無言ですすった。
並木との関係を羽鳥先輩にバレていたとは予想外だった。
「もしかして、並木とのこと気にしてる?」
「あ、まぁ...」
「ははっ、俺は偏見ないから安心して。」
「はい。」
「それに、俺も男が好きだから。」
「ごほっ...」
「おい、大丈夫かよ。」
俺は羽鳥先輩の衝撃発言に、咳き込んでしまった。
「すみません。大丈夫です。」
俺はそば茶をごくごくと飲み干した。
「だから、たまには俺とも昼飯食べてよ。それだけでいいから。」
「そういうことなら、はい。」
「はぁ、木下優しすぎ。そこは、断らないと。」
羽鳥先輩の言っている意味が分からない。
「だから、俺が好きなのは木下。お前なの。」
「え、」
「くそっ、言わないつもりだったのに。」
「お、おれは...」
「分かってるから。木下が並木しか見てないことくらい。それでも、伝えたかった。勝手でごめん。」
こういう時、なんて答えるのが正解なんだろう?
俺は混乱する思考を無理やり整理した。
どんな答えでも、羽鳥先輩を傷つけてしまう。
だけど、俺の頭には並木しか浮かんでこなかった。
「はい、それでも俺が好きなのは並木なので、先輩の気持ちにはこたえられません。ごめんなさい。」
俺は精一杯の気持ちを込めて伝えた。
「俺、先に会社戻りますね。」
「うん、ありがとな。木下。」
こんな時でも、羽鳥先輩は俺に微笑みかけていた。
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