N極~Side:木下~

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「はぁ...まだ終わらない。」 仕事が立て込んで、俺は残業していた。 昼間の羽鳥先輩のこともあって、仕事が手に付かなかったというのもあるが... 仕事にプライベートを持ち込んではならない。 これは基本だ。 俺は両頬を軽く叩いて、ラストスパートを始めた。 それから、約1時間。 時刻は22時を回った頃。 「終わったー」 俺は帰り支度をし、スマホを確認した。 そこには21時台に並木からメッセージが届いていた。 俺はエレベーターを待つ数十秒の間に、急いで返信した。 「残業だった。今から帰るよ。」 ブーブー 「お疲れ様。」 並木らしいシンプルなメッセージ。 でもそれが今の俺には何より嬉しい。 並木じゃないとだめだ。 並木が居ないと俺はだめだ。 いつからこんなにも並木を必要としていたのだろうか。 「早く帰ってきて。」 俺は無意識にこのメッセージを送ってしまった。 取り消そうと思った時には、時既に遅し。 トゥルルルルル... 俺がエレベーターに乗り込んだ時、スマホが震えた。 恐らく、並木からだ。 俺は急いで会社を飛び出すと、通話ボタンを押した。 「もしもし...」 「もしもし、俺だけど、今大丈夫か?」 「うん、駅まで歩いてるところ。」 並木の声だ。 安心する。 「どうした?」 「ううん、なんでもない。それよりそっちの仕事は順調?」 「ああ。予定より早く終わりそうだよ。」 「そっか。流石だ。」 「やっぱり変だ。」 「だから何が?」 「木下が。なんかあっただろ?」 鋭い並木には敵わない。
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