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S極~Side:並木~
名古屋出張での仕事が大詰めを迎えた頃、俺のスマホが鳴った。
嫌な予感しかない。
だが、無視する訳にもいかない。
俺は、渋々、通話ボタンを押した。
「もしもし」
「もしもし、羽鳥だけど。出張お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
「おい、並木、棒読みだぞ笑」
「そうでした?そのつもりはないのですが」
用件はなんだ。
すぐに切り出さない辺り、木下絡みに違いない。
「あのさ、今日、木下に告白した。」
なんだと!?
思わず飲んでいたコーヒーを吹き出してしまいそうになった。
「そうですか。」
俺はあくまで、冷静を装い答えた。
「なんだ。もっと動揺するかと思ってた。それか、俺に怒るかと。」
これでも十分、苛立ってますが?
ただ、ここで取り乱したら相手の思うつぼだ。
「安心してくれ。はっきり振られたよ。木下から並木が好きだって聞かされた。完敗だわ。」
「承知しました。」
「ビジネスモードだね。」
「用件はそれだけで?」
「そう。」
「ご丁寧にありがとうございました。」
「あ、うん。」
俺は電話を切った。
くそっ。なんでこんな時に俺は出張なんだ。
早く木下の元へ行って、彼を抱き締めたい。
俺も木下だけが好きだと伝えたい。
東京まで遠い。
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