S極~Side:並木~

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「お疲れ様です。これ、名古屋土産です。皆さんでどうぞ。」 「並木!」 俺を見つけると木下が駆け寄ってきた。 「おかえり!早かったな。」 「お疲れ、木下。早めに仕事が片付いたからさ。」 「さすがだな。」 木下は笑顔で言った。 「木下はあとどれくらいかかりそう?」 「この資料を印刷したら今日は帰れるよ。」 「それなら夕飯食べに行くか。」 「行く!」 すると、そこに俺たちの関係を知っている女子社員がやって来た。 「並木くん、お疲れ様。」 「お疲れ様。」 「心配しなくても、2人のことは誰にも言わないから。私、気づいたの。並木くんは私にとって推しなんだって。だから、2人の恋を見守ることにした。職場で、2人のイチャイチャが見られるなんて私は幸せ者ね。」 「はぁ...」 なんと答えるのが正解なのだろう。 彼女に木下とのキスを見せつけて以来、しつこいメッセージも、言動も全くなくなった。 俺たちに害のない範囲で楽しんでくれているのなら、しばらく様子をみてもいいかもしれない。 それよりも問題は羽鳥だ。 今日の木下は、明るく振舞ってはいるが、時々、表情が曇る。 俺の前くらい無理をしてほしくない。 「並木、どうした?出張で疲れてるか?」 木下が俺の顔を覗き込んで尋ねた。 「それは大丈夫。それよりお腹空いた。」 「俺も~」 俺たちは一緒にエレベーターに乗り込んだ。 密室で、二人きり。 「木下、俺の前では無理しないでな。羽鳥先輩のこと俺に気を遣わずに話せばいいから。」 「並木……ありがとう。」 「どう致しまして。」 俺は微笑みながら、そっと木下の手を握った。
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