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N極~Side:木下~
並木が外で俺を抱き締めた。
いつもなら、恥ずかしいと言ってしてくれないのに。
並木は俺の気持ちを察して、安心させてくれる。
俺が羽鳥先輩に告白されたことを知って、出張先から急いで帰ってきてくれた。
俺の為に尽くしてくれる並木に、俺は何が出来るのだろうか?
「よし、行くか。」
並木は俺から離れると、俺の手を握った。
やはり、今日の並木はいつもと違う。
公衆の面前で、俺を抱き締めたり、人目を気にせずに俺と恋人繋ぎをしたり。
「並木、俺、大丈夫だよ。」
並木に安心して欲しい。
「木下の大丈夫は大丈夫じゃないんだよ。」
「そんなことない!」
「俺の前くらい素直になれ。」
並木の声は優しくて、気が抜けてしまった。
「気づけなかった、先輩の気持ちに。」
「うん。」
「並木は知ってたんだな。」
「うん。」
「俺、1人だけ知らないで、のんきなもんだよな。」
俺は自嘲的に笑った。
「木下はわるくない。俺も羽鳥先輩の気持ちを知ってたのに、木下に隠してた。ごめん。」
「ううん。」
「木下は今誰が好き?」
「並木。」
「ならそれでいいんじゃない?」
「並木がいい。並木じゃないと嫌だ。」
俺は並木の目を見て訴えた。
「俺は木下が傍に居てくれれば幸せだよ。」
並木の言葉を聞いて俺は決心した。
俺の人生、並木に捧げると。
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