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S極~Side:並木~
今日は土曜日。
木下は朝から休日出勤。
家には俺一人。
そして、リビングのテーブルの上にはスマートフォンと、家電の子機がスタンバイ中。
時刻はAM9:50
決戦まであと10分。
俺は何度もダイヤルの番号を復唱した。
ここでつまずく訳にはいかない。
恐らく、3分、いや、1分以内に勝負がついてしまう可能性もある。
俺は深呼吸をした。
5分前を知らせるアラームが鳴った。
それを消して、目を閉じる。
そして、俺はダイヤル番号をスマートフォンと子機に打ち込んだ。
あとは、通話ボタンを押すだけ。
遂にその時が来た。
運命のAM10:00
俺は通話ボタンを押した。
結果は……
「ツーツー……」
話し中。
そんなこと予想の範囲内だ。
それから俺は間髪入れずに、2つの電話の通話ボタンを押し続けた。
そろそろこの闘いが始まってから、2分が経つ。
きっと、これがラストチャンス。
繋がれ。
俺は念を込めて、何十回目か分からない通話ボタンを押した。
「トゥルルル……こちらチケットセンターです。」
繋がった!心の中でガッツポーズ。
問題はチケットが残っているかだ。
「クリスマス公演のチケットを2枚欲しいのですが...」
「2枚ですね。かしこまりました。」
あった!!奇跡だ。
俺の脳裏には、喜ぶ木下の顔が浮かんだ。
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