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スーパーもコンビニも近くにはない。しかしそのため交通量は少ない。近くに小さいが公園もある。何より行き交う人たちの顔が皆穏やかだ。だからこの町に住もうと決めた。これから産まれてくるこの子のために。
「あ、動いた」
「え、どれどれ……」
「大人しくなっちゃった」
「残念!」
大きなお腹に夫婦で手を添える。至福のひとときだ。
「おっと、遅刻しちゃう。行って来るよ」
「うん、気をつけてね」
「紗栄子もな。今日行ってくるんだろ?」
「うん」
子供ができたのを機に私達は家を買った。今まではワンルームのアパート暮らしだったが、さすがに子供が産まれたら狭すぎる。それに赤ちゃんの泣き声は周りの迷惑になる。2人で新居を探し回りここに決めた。中古だが陽当りも良く間取りも気に入った。何より環境が良い。
今日は近所に挨拶に行こうと思い手土産も用意してある。
「無理するなよ」
「うん。でも早い方がいいから」
「そうだけど体第一だぞ。じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
車で出掛ける拓也を見送る。優しくて頼りになる夫。きっといいパパになるだろう。幸せを感じながら家に戻った。
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