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Act.6
「もう行くのかい?」
「えぇ、お世話になりました」
ギルアを斃してから五日後、リアーナとウリエルはようやく旅立てる状態になった。
あの屋敷の地下には十人以上の女性が捉えられており、口にするのも憚られるような行為をギルアに強要されていたのだ。彼女たちが自宅に戻り、ある程度落ち着くのを待ってリアーナは街を出ることにした。もちろん、報酬も受け取り済みだ。
「ねーちゃん、もっとウチにいてよ……」
ジャンが泣きそうな顔をする。
「そんな顔しないで、また来るから。笑顔で見送って、ね?」
リアーナはジャンを抱きしめた。
「あんたもジャンにさよならを言いなさい」
「キュ~イ……」
ウリエルも寂しそうだ。犬らしくもともと子供が好きで、特にジャンとはウマが合ったからな。
ジャンはリアーナから離れて、宙に漂うウリエルを見上げた。
「ウリエル、おれ、けんしはあきらめた」
そう言ってジャンは少し恥ずかしそうに眼を伏せた。
「キュイ?」
「もう、ボーケンはこりごりだよ。おれ、このやどやをつぐことにきめたんだ」
ジャンは改めてウリエルを見上げた。
「でも、ウリエルはユーシャをめざしてよ! だって、おれにとってウリエルはユーシャだからッ。たすけてくれて、ありがとう!」
ジャンが両手を伸ばすとウリエルは彼の腕の中に飛び込んで、顔をペロペロと舐めた。
少しは夢が叶って良かったな、ウリエル。
-終-
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