一晩の演奏

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一晩の演奏

深夜。眠っていると、どこからともなく和風な音色が聞こえてくる。 かろうじて弦楽器の音である事は分かったが、それ以上の事が分からない。 今までこんな事はなく、見知った近所の人がこんな夜更けに楽器を奏でているとも考えにくい。 私は眠い目をこすりながらベッドから起き上がり、音の出所を探った。 部屋のライトをつけようとリモコンを操作するも、電気が付かなかった。こんな時に限って電池切れか、と嫌な気分になりながら、カーテンを少しずらし、外の灯りを頼りに部屋を見渡す。 特にこだわりなく集められた家具が並ぶ、見知った自室だ。 ただ、貰ったばかりのクイックルワイパー入れだけが、妙に浮いてみえた。 何か変だ、と目を凝らして、私はヒッと声をあげた。クイック(略)入れの隣に、正座している人間がいるではないか。着物姿で、髪も綺麗にまとめあげている、女性。時代劇に出てくるような姿そのもので、私はとても驚いた。
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