木箱の正体

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木箱の正体

私は朝から父を叩き起こし、前に着物を下さった方と話がしたいと願い出た。 父は一晩の体験を聞くと快く間(あいだ)を取り持ってくれ、私はその日のうちに着物好きのお婆さんと話す事が出来た。 お婆さんにさらっと事情を話し、早速木箱を見て頂いた。三味線入れだった。今風に言えば、三味線スタンドだろうか。言われて「三味線スタンド」と検索をかけると、まったく違う形のものが出てくる。 お婆さんの話によれば、これはかなり昔の形で、これだけ状態良く保存してあったのなら、とても大事に使っていたものなのだろう、との事だった。 「酷い」と彼女が怒っていたのは、私が三味線スタンドに、掃除用具を仕舞った事に対してだったのだろう。しかもよりにもよって、ずぼらな私は、「まだ使えるから」と汚れたままのハンディモップも木箱に突っ込んでいた。 彼女に対して申し訳ない気持ちになった。
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