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田舎
僕は別に田舎が嫌いなわけではないが。
「いやー、毎日寒いないー。こんじは体こわくてわがんねないー。」
このきつい訛りと
「んでよ、ずんちゃんは、来年から道路っ端の畑はやんねんだど。ますます草生いっちまってわがんねべなー。」
他人の話ばかりする、
「ほでよー、利明ちゃんどごの犬!むがし、くっつがっちよー。放し飼いにしっから、そごらにいる、やろっこめろっこら危なぐってしょがね!」
「んだでぇ。安江ちゃんともいっきゃって、ほだごど言ってだ。でも、あんだ、利明ちゃんの前では言わんなよ!へろらへろら喋ってっと」
「利明ちゃんに言うわけねーでば!なあ?」
そして急に僕に話を振り
「…は、はあ、まあ。」
時間は一瞬止まり
「いいから、いっぱくわんしょー。」
「ほだほだ遠慮すんなよ。ハイカラでねけどな。」
なんとかご飯を食べさせようとする空気に
「もう、お父さんはほだごどばっか、言ってんでねって!」
この狭いコミュニティの価値観と
「んでよ、ずんちゃん、カラオケもうやんねんだど集会所で…はっ…はっ…ビークショ!ビーグショ!ビッグション!んあーい、なんだあ!」
「ほれ!ティッシュそこさ、あっぴした!!」
「あったあった。ははは」
妻が死んでなお、この2人に付き合わなければならないこの状況が
「渉さん、気にしらんなよ。食べて。」
「は、はい。…いただきます。」
嫌で堪らない。
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