葉摘

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葉摘

葉摘と出会ったのは、市役所だった。 僕は電話会社の営業で、財政課に市で運営しているケーブルテレビの伝送路工事の見積もりに来ていた。 葉摘はその頃、ケーブルテレビのアナウンサーをしていて、建設部の隣の部屋の市長応接室に市内にある私立の聖栄学院の野球部が甲子園出場激励金を受け取りに来たその取材に来ていた。 エレベーターに乗り、僕がボタンを押そうとすると細い指が先に「①」のボタンと「閉」のボタンを素早く押した。 僕は思わず、その指の持ち主を見ると、きちんとスーツを着て腕に腕章をし、カメラのストラップを肩にかけ、三脚の船に手をかけた女性がいた。 それが葉摘だった。
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