田舎

1/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ

田舎

僕は別に田舎が嫌いなわけではないが。 「いやー、毎日寒いないー。こんじは体こわくてわがんねないー。」 このきつい訛りと 「んでよ、ずんちゃんは、来年から道路っ端の畑はやんねんだど。ますます草生いっちまってわがんねべなー。」 他人の話ばかりする、 「ほでよー、利明ちゃんどごの犬!むがし、くっつがっちよー。放し飼いにしっから、そごらにいる、やろっこめろっこら危なぐってしょがね!」  「んだでぇ。安江ちゃんともいっきゃって、ほだごど言ってだ。でも、あんだ、利明ちゃんの前では言わんなよ!へろらへろら喋ってっと」 「利明ちゃんに言うわけねーでば!なあ?」 そして急に僕に話を振り 「…は、はあ、まあ。」 時間は一瞬止まり 「いいから、いっぱくわんしょー。」 「ほだほだ遠慮すんなよ。ハイカラでねけどな。」 なんとかご飯を食べさせようとする空気に 「もう、お父さんはほだごどばっか、言ってんでねって!」 この狭いコミュニティの価値観と 「んでよ、ずんちゃん、カラオケもうやんねんだど集会所で…はっ…はっ…ビークショ!ビーグショ!ビッグション!んあーい、なんだあ!」 「ほれ!ティッシュそこさ、あっぴした!!」 「あったあった。ははは」 妻が死んでなお、この2人に付き合わなければならないこの状況が 「渉さん、気にしらんなよ。食べて。」 「は、はい。…いただきます。」 嫌で堪らない。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!