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土曜日の今日。
『連絡なしで、好きな時に来てくれたらいいで。そやからこれ渡しとくな。』
言いながらカレから渡されたアパートの鍵を使って、音をたてないようにそっとドアをあけた。
そーっとひも靴を脱ぎ、すり足でワンルームに繋がる短い廊下を進む。
そーっとドアをあけて、そーっとしめる。
コタツの天板に呑んだビールの缶、食べかけのおでん、黒のパーカーをほっかぶりしてうつ伏せになって寝ているカレ。
静まり返った部屋の中で、どうしようか?と少し悩む……………ふっと思いついた!
背中にしょっていたリュックを音をたてないようにじゅうたんの上に置く。そーろっとふたをあけて中から大きめの筆箱と1冊ノートを出す。
筆箱のチャックを音をたてないようにゆっくりあけて、中からハサミと細書きの黒の油性ペンとセロテープを出して、じゅうたんの上に置く。
ノートを手にして後ろの何も書いていないページをひらいて、また音をたてないように
1枚ゆっくりちぎる。
左手にちぎった紙、右手にハサミを持って、フリーハンドで直径5cm程の○を2つ切る。若干?いびつな○…。じゅうたんの上でその○の中に「∩」(笑っている目)をペンで各々に描く。その○をひっくり返す。
セロテープをまたまた音をたてないように7~8cm程の長さに2本切る。コタツの天板の端に仮置きで貼る。1本を手に取り輪っかにして両面テープっぽいものを作ってひっくり返した面に貼る。もう一つも同じようにする。
「出来た!」と心の中で叫んで静かにガッツポーズ!!
使ったもの、出たゴミをそーっとリュックの中にしまう。そーろっとふたをしめる。リュックを背中にしょう。
両手に出来上がった○を持って、そっとカレに近寄る。気付かれないように…。
手に持っているものをそーっとカレがほっかぶりしているパーカーに貼る。パーカーに両目がついているみたいに。
カレからそっと離れて、足音をさせないように部屋をあとにする。
ーーーカレが起きて…
気ついてくれるかな?
洗面所に行って、鏡見た時気ついてくれるかな?
その時どんな顔するやろ?
笑ってくれるかな?もしかしたら、呆れるかな?
そうか、もしかしたら、気がつく前に貼ったの下に落ちてたらどうしよ?
カレ、どんな反応するやろ?と考えたら自然にニヤけしてしまう。でもニヤニヤは止めれず、あまり気にせず、そのままの顔で駅へ向かった。
(終わり)
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