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魔法学校の授業で
楽しいクリスマス休暇の後、新年が開けて魔法学校には生徒たちが続々と返ってきた。
3年生の優等生ナールとカルロも楽しいお家の時間を過ごして学校に戻ってきた。
3年生の新学期の授業が始まった。
冬は箒の授業もなかなか寒くて外ではできない日も多いので、魔法薬や上の呪文の授業に重きが置かれることになる。
今学期の3年生がどうしても合格しなければいけない授業に魔法薬を使って動物に化ける授業が入っている。
ナールもカルロも、魔法薬の授業でもこれまでの成績は良かったので、魔法薬をうまく作る事より、どんな動物になるかを考えるのに忙しかった。
ナールのお母さんはマヌール(人間族)なので、人間の動物園に連れて行ってもらったこともあるので、実は凶暴だが、見た目がとってもかわいい『アライグマになりたい』と思っていた。
カルロは両親とも魔法属の出身なので、魔法属の動物園にしか行った事がない。
カルロは魔法属の動物園にいた貴重な動物『ユニコーンになりたい』と思っていた。
魔法薬の時間、基本の魔法薬までは作り方が一緒だが、最後に入れる2種類のエキスになった薬草や、魔法動物のしっぽ、貴重な植物の根、どれを選んで入れるかで、慣れる動物の種類が決まってしまう。
魔法薬の授業は席が特に決まっていなかったので、自分の薬鍋を持って好きな席で魔法薬を調合した。
ナールとカルロはどちらがいち早く好きな動物になれるかを競っていたので、他の生徒そっちのけで二人でバチバチと星を散らして魔法薬を作っていた。
まずは基本の魔法薬づくり。二人とも同じくらいのスピードで基本の魔法薬を作りまずは1種類それぞれの鍋にエキスを入れた。
周囲のクラスの友達は二人のあまりの勢いに気おされ、そして、どちらかが勝つかではなく、いつも優秀なこの二人に少しいたずらを仕掛けたくなった。
ナールとカルロが最後の材料を取りに席を離れたとき、クラスの友達は二人の鍋を入れ替えた。
急いでいた二人は鍋が自分の物ではないことにも気づかずに、ナールは最後の準備されていたマヌールの世界のアライグマの毛を。カルロはユニコーンのしっぽの毛を、友達が入れ替えた鍋にそれぞれの仕上げの材料を入れた。
そして、ナールとカルロは材料をよく混ぜ合わせて、そっと自分の調合したはずの魔法薬を飲んだ。
すると・・・・
ナールは小さなアライグマになるはずがスラリと足の長い馬の形になって行く。そして、そのスラリとした馬にアライグマの縞々のしっぽが生え、アライグマの顔に角の生えたヘンチクリンな動物ができた。
同時にカルロは小さなモフモフの毛の生えた茶色かかったアライグマの身体に長すぎるユニコーンのしっぽと大きすぎるユニコーンの顔に丸いアライグマの耳がついたこれまたヘンチクリンな動物になった。
二人は慌てふためいて、パッカパッカ、チョコチョコと教室を走り回り、クラスメイトは大笑いをした。
先生が何事かと様子を見に来たときには、もどる魔法薬すら効かないヘンチクリンな動物が2匹教室にたたずんでいた。
「いったい・・・・」
「とにかく、二人とも保険の先生の所に行っておいでなさい。」
「それほどややこしく混ざっていないようだから保険の先生が何かお薬を作ってくれるはずだわ。」
そして、残ったクラスのみんなを集め
「確かに、あの二人は成績が良いので皆様には少々腹立たしいのかもしれません。」
「かといって、クラス全員で二人を陥れると言うのはどうなんでしょう?」
「あなたたちの魔法薬の点数は学期末の楽しみにしておいてください。」
「それよりも、薬の混ざり方によってはあの二人元に戻れない危険だってあったんですよ。他人の魔法薬を勝手に入れ替えるなど、二度としないと約束し、羊皮紙3m分の反省文を提出しなさい。」
言葉だけではなく、実際に全員の頭に弱い雷を落とした。
ナールとカルロは保健室にいて保険の先生に薬を調合してもらったが、3日間は保健室から出ることができなかった。
徐々に元に戻ってようやくクラスの授業に戻れた時には、クラスの友達が二人に向かってみんなで謝った。
二人は『まぁ、元に戻ったんだし、何か言いたいことがあるなら魔法じゃなくて言葉で伝えて。』と返事をして、また元通り、普段の授業へと戻ることができた。
今回は優秀な二人も自分のなりたいものにはなれなかったけれど、これも魔法学校ならではの楽しい出来事となってそのうち良い思い出になる事だろう。
【了】
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