いじめるアイツが、死にますように。3

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「清花さん、何でツリー飾らないの?」  屈託のない笑顔で、彼女は言った。 「忘れてたわ」 「ええっ、ありえない。クリスマスにツリー忘れるとか」  彼女は頬を膨らませる。   「ごめんね。来年は飾るから」  子供のように駄々をこねる彼女の髪を、私は優しく撫でる。  彼女との出会いから、1年。溢れるほどの「愛」と「ぬくもり」を、私はこの子に与えてきた。そして、「彼」の命日であるクリスマスイブに、死の間際、「彼」が身に着けていた赤いマフラーを贈る。おそらく彼女は覚えてはいないだろう。だけど、彼女の中に眠る記憶が思い出させるはずだ。自分が殺した「彼」のことを。たとえ僅かでも、自らの罪を悔いたその瞬間、彼女は私に殺される。「来年」が彼女に訪れることはないのだ。 「はい、これ」  私が差し出した箱を、彼女は驚いた顔で見つめた。 「メリークリスマス」  マフラーを巻き、私は彼女の家を出る。外は、視界を埋め尽くすほどの雪だ。  つい先ほどの彼女の言葉が耳にこびりついている。今はもうこの世にいない彼女が、涙と共に放った言葉だ。 『自殺じゃない。死んじゃったの、あの子。私たちがいじめている時に』 『清花さんさんなら分かってくれるよね。寂しかったの。どうしようもなかったの』  すごいわ。成長したのね、あなた。自分の罪に気付けるほどに。  だけどね、もうあの子は成長出来ないの。  今更泣いたって遅い。どれほど悔やんでも、死んだあの子は戻ってこない。あなた達の罪は永遠に消えない。この世から消えるべき人間なのだ、あなた達は。 「終わったよ、奏太…」    雪の舞い降りる天に、私は呟く。  奏太。  あいつらに殺された、私の息子。  あなたを殺した4人は、皆、この世から消え去った。  りん、と鈴の音が耳を掠めた。
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