指折り数え

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 幹恵は電話のコール音に洗濯物を干す手を止めて受話器のもとへ向かった。固定電話を設置しているが利用する頻度が少なくほこりを被ることも多いが、形式的に設置していた。 「もしもし」 「藤原秀正は預かった」 一音ずつ区切られた音声で違和感を感じた。 「は?」 「返して欲しくば1000万円を現金で用意しろ」 「な、どういう」 「状況を伝えるために録音をながす」 すると、受話器から男の呻き声が聞こえてきた。口が自由にないのかくぐもった呻き声だった。男は何かに怯えているようで、呻き声のなかに確かな恐怖が感じられた。徐々に恐怖が増していく音声に幹恵にも恐怖が伝染してくる。  ひどく鈍い音が先ほどまでと比べ物にならないほど大きな呻き声共に聞こえた。 「これから毎日取引が終わるまで藤原秀正の指を一本ずつ折っていく」 幹恵は戦慄した。 「本日中にまた連絡する。警察の動向を察知した場合、藤原秀正の身の安全は保証しない」 電話は一方的に切断された。
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