BL団地妻シリーズー報復は蜜の味ー

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「まぁそれで色々話してたら、アレ?共通点多くね?ってなってさ。お前の名前だしたら全員一致」 犬塚が思い出したように含み笑いを浮かべた。 「いやーあの時は本当に驚きましたよね。まさか全員の元嫁だったとは」 雉間は熱々の豆腐をふーふーと冷ましながら呑気に笑っている。 「すごいだろ?たまたま知り合った奴らが全員お前に逃げられた男だったなんてさ」 はじめは再び茫然とした。 にわかに信じ難い話だ。 だが、三人ともそんなたちの悪い冗談や作り話をするようなタイプではないことははじめがよく知っている。 信じ難くても目の前の状況を受け入れるしかない。 「そ、それで…」 はじめは動揺しながらもなんとか声を振り絞った。 「全員集まって俺になにを要求するつもり」 この状況がただ楽しく鍋をつつく会だとも思えない。 恐らく彼らは逃げるように去っていったはじめのことを快く思ってはいないはずだ。 慰謝料の請求をつきつけられるくらいの覚悟はできている。 すると突然犬塚がアハハと声を上げた。 「要求?そんなもんないって、なあ?」 犬塚の投げかけに猿渡が頷く。 「あぁ、もう第一段階はクリアしてる」 「意外と計画通りにいくもんですね、…ってこの豆腐まだあっつ…!」 雉間は相変わらず熱々の豆腐と格闘している。 「え?意味がわからないんだけど何?計画って…」 慰謝料を請求されない事に内心ホッとしつつも、彼らが何を考えているのかよめなさすぎて怖い。 もしかしたら今すぐ逃げた方がいいのかもしれないと思いはじめた。 だがこの状況ではもう手遅れだろう。 きっとどんなに暴れても抵抗しても、三対一では勝ち目ほぼゼロだ。 「俺たちバーで知り合った日に全員で決めたんだ。お前を共有妻にするってね」 「共有…妻?」 今日はとにかく衝撃的な事が起こる日らしい。 犬塚と偶然会ったことに始まり、猿渡と雉間と犬塚、元夫が全員知り合いだった。 これ以上驚くことはないだろうと思っていたのにそれを上回る衝撃的な言葉に、文字通り頭が真っ白になる。
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