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「え!?離婚歴3回!?」
真昼間の静かなカフェに似つかわしくないワードが響き渡る。
店内にかかっていたスローテンポのボサノバ曲がちょうど終わったタイミングだったので、周りにいた他の客がギョッとした表情でこちらを見てきた。
「シーッ、声がデカイって秋乃」
市川はじめは、友人である笹塚秋乃の口を塞ぐとじろじろ見てくる客に向かって牽制のガンを飛ばす。
「ご、ごめん。だってまさか身近に離婚3回もしてる人がいるなんて予想外でさ」
トーンを落とした秋乃がひそひそと囁く。
はじめは苦笑いを浮かべると、アイスコーヒーのグラスにささったストローをくるくるとかき回した。
離婚3回経験者。
それは紛れもなく、はじめの事だ。
つまりはじめの戸籍にはしっかりとバツが三つついているという事になる。
最初の夫はホストだった。
歌舞伎町で一二を争う有名店の万年一位ホストで、それはもうとんでもない数の客を抱え馬鹿みたいに金を稼ぐ男だった。
顔やスタイルはもちろんよく、話術も匠。
そんな男となぜ結婚できたのかはよくわからない。
一等地に建つタワーマンション最上階での優雅な暮らし。
欲しいものは何でも買ってもらえるという、 とにかく毎日贅沢三昧な生活だったが、やはりホストという職柄、夫の事を心から信じることができなくなり、結局はじめの方から逃げ出してしまったのだ。
そんな時に出会ったのが二番目の夫だった。
二番目の夫は役所勤めの公務員という、最初の夫とは真逆のような男。
朝はきっかり6時に起床し22時には就寝する。
朝食は必ずパンで、弁当は手作りのみで彩り重視。
寡黙で大人しくはじめの嫌がることは決してしなかったが妙にこだわりが強く、セックスの日や体位のローテーションまで決めているような男だった。
結局、そのこだわりについていけなくなって逃亡。
出会ったのが三人目の夫だ。
三人目の夫はとにかく普通だった。
会社勤めのサラリーマン。
特に顔がいいわけでも性格がすば抜けていいわけでもない。
下手すると顔の印象まで薄くなるような、そんなごくごく普通の男だった。
ただ鮮明に覚えているのは、アソコが異様にでかかった事。
とにかくかなりの巨根で、セックスのたびに腰を痛めていた記憶がある。
理由は特にないが、なんとなく気分で逃亡。
その後はじめは今の夫と出会い結婚したのだ。
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