BL団地妻シリーズー報復は蜜の味ー

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はじめはわりと行動力がある。 こう、と決めたら必ず実行するタイプだ。 いつもなら黙って家を出て行き、後から離婚届を送りつけるという我ながら身勝手な手法を用いていたが、今回ばかりははっきり告げてやろうと思っていた。 あと腐れ云々もあるが、あのダメ男(もはや夫と呼ぶのも憎らしい)に多大なる非があることをわからせてやりたいからだ。 ある日の朝。 はじめは意を決して男に告げた。 これまで我慢して溜めに溜めていた不満を離婚届と一緒に。 ところが男は大あくびをすると寝癖だらけの頭を掻きながらこう言い返してきたのだ。 「朝からくだらない冗談やめろよな。それより朝飯は?」 この答えにははじめも開いた口が塞がらなかった。 どこまでもクズで馬鹿でひとりよがりな男。 このすこぶる性格の悪い男に惚れたのかと思うと自分自身にさえ呆れてしまう。 ますます離れたい気持ちが強くなり、はじめは強気で告げた。 「自分で勝手に食べれば?俺もうあんたのために何もしたくない、離婚して」 「やだね。これ、俺がサインしないと受理されないやつなんだろ?だったら一生サインしない」 はじめの言葉に男も負けじと言い返してくる。 結局、離婚してしないの言い争いは二時間経っても平行線のまま、試合は持ち越しとなってしまった。 やはり黙って出て行った方がよかったかもしれないと少し後悔はしたが、不満をぶちまけずにはいられなかったので仕方ない。 それに、はじめは決して諦めたわけではなかった。 必ず離婚してやる。 そして自由を手に入れてまた新しい恋をするのだ。
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