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高柳俊介の泥棒
俺は商店街に届いた尺玉をギャングの手下の板倉に盗むように依頼された。なんでそんな物を盗むのかわからなかったが、忠実に仕事をこなそうと思っていた。
尺玉は重たいので車で運ぼうと商店街に向かっていたら、こちらの方に尺玉を積んだトラックがやってきて眼を剥いて慌てた。俺は急いでそのトラックを追いかけたが曲がり道で見失ってしまった。
板倉に電話でそのことを話すと泣きながら怒っていた。
「高柳さん、どうしてくれるんですか! 僕、ボスに殺されてしまいますよ。泥棒の天才と言われているあなたが先を越されるなんて」
板倉の泣き声が悲痛で、俺としたことがなんで失敗したのだろうと後悔した。
「花火を盗むことができなかったぐらいで殺されることはないだろう?」
「うちのボス、容赦がないんです。いったん電話を切って兄貴に相談してみます。後からかけ直します」
板倉が命の危険に晒されるような失敗だったのかと思うと、胃液が込み上げてきて嘔吐した。しばらくしてから電話がかかってきた。
「高柳さん、別の仕事をしてください。今度は失敗しないでくださいね」
「絶対に失敗しない。何をすればいいんだ?」
「葉隠村の会計を担当している副村長の裏帳簿を盗んできてください」
俺は天才泥棒。前回は失敗したが、今回は村の役員に成り切って盗んでみせる。普通の泥棒にはできないことが天才の俺にはできる。
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