斎藤和樹の誠実さ

1/1

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

斎藤和樹の誠実さ

 俺は駄菓子専門で万引きを繰り返していた。毎日、同じ店で同じチョコを万引きしていた。俺はこの店のチョコが好きだった。  店主の田中は万引きをしていることで通報はしなかった。田中の優しさに涙が出る思いだった。  俺は田中に諭されて真面目に生きようと思った。もう万引きは決してしない。そして副村長をしている父親の不正を告発しようと思った。  父親が村長に渡る金をピンハネしていることは知っていた。しかし自分が万引きをしていることから告発することができなかった。告発すれば自身の罪も明るみになるからだ。  それと村長にダークヒーロー賞というものを設立させたのも父親の仕業だった。父親は言葉巧みに悪党が蔓延るとお互いに潰しあって村の健全化に繋がると村長を騙して設立させ、村民の不平を集めて村長を失脚させるつもりだった。  俺は自分も罰せられる覚悟を決めて村役場の会議で二つの件を村長に話した。村長は怒髪天を衝く様子で父親に激怒した。父親は即時、副村長職と会計職を降ろされた。証拠となる不正な裏帳簿は紛失していたが、こんな時のために父親との会話を録音したものを渡したことで十分だった。  そんな時、村役場に電話がかかってきて、副村長まで電話が取り次がれた。俺が降ろされた父親の名前を名乗って電話に出ると、不正な裏帳簿の証拠を持っているので表に出されたくなければ金を払え、非合法薬物の検閲を緩和しろと脅してきた。しかしもう懲戒免職されたこと、裏帳簿は必要ないことを話すと電話は即座に切られた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加