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それでもアヤとは実際に会うことになった。
彼女の背は男性としては低い僕より、さらに5センチほど小柄で、細くやせている分、とても華奢に見えた。
透き通るような色白の肌が、昼間の陽の光で輝いて見えた。
襟の小さな紺色のワンピースを身に着け、艶やかで長い黒髪が腰の上までまっすぐ伸びていた。
か細い声で話し、時折人懐っこいくしゃくしゃの笑顔を見せた。
彼女のことを何も知らなければ、まさに、ごく普通の清楚な美少女だった。
半日、大阪・梅田駅周辺で一緒に過ごしたが、大人しいイメージだった彼女は、愛嬌もあり、僕といて楽しそうにしていた。それもあったのだろう、僕は手紙だけの関係だった時よりも、彼女をもっと好きになった。
その別れ際、駅のホームで事前に約束していた通り、自分の好きな曲を入れたカセットテープを交換した。
僕が大好きなJ‐POPの中でも、他人に知られると恥ずかしくなるくらい露骨なラブソングを厳選して数曲入れていた。
カセットケースを裏返し、インデックスの曲目を見やった彼女は、やがて小首をかしげた。
それから、さらりと言った。
「なんだ。ロックじゃないんだ?」
後になってこの言葉が、僕の生き方を根底から覆していくことになる。
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