1 溜め込んだ想い

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 授業中にこっそり描いた構図を手に、放課後の美術室に向かう。今日は気持ちが軽い。  あと数歩先の扉は少し空いていて、中の声が漏れてきた。 「一発屋だよな、峰里先輩って」  一瞬で足が鉛になり、動けなくなった。 「才能はあるんじゃないの。絵は上手いし」  別の、女子の声。 「プレッシャーに潰されたんだろ。哀れなり」  複数人の笑い声が上がった。「才能ないお前が言うな」と突っ込む声。二年生のようだ。 「俺のモデルでヌードになってくれた方が役に立つかもしれんな」 「げっ、菊池、あんな細い人がいいの?趣味悪」 「いや、けっこうスタイルはいいと見た」  卑猥な笑い声に、胸に鋭利なものが突き立てられたみたいで息が苦しくなる。 「あんたの好みなんて、まあいいけど。私はあの人嫌い」  声からすると、瀬野さん。面と向かって「あの人」呼ばわりされたことはなかった。嫌われているのは彼女の視線から知っていたのに、改めて聞かされると耳を塞ぎたくなる。 「峰里?」  背後からの声に、子猫がビックリするみたいに震えてしまった。すぐに追いついて、私の横に並んだのは大駒だった。 「どした?」 「......な、ん」  なんでもない。それだけなのに言えない。
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