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朝が好きだ。清々しい空気が昨日を浄化している気がするから。
私が通う高校は、自宅から三駅先にある。上りと下り線、一本ずつの小さな駅は、私と同じ制服の学生を受け入れた後はすぐに閑散とする。
「線路か......」
最近は何かと作品のモチーフを探している私は、改札を出たすぐ横の線路にスマホのカメラを向けた。
全体図、線路だけ、改札口の接写、あらゆるものをいろんな角度で撮った。
線路を渡る自動車やバイクの音を遮って遮断機が鳴り始めたから、慌てて棒の外に出て、赤く輝く遮断機もあおりの角度で撮った。
なんだか描けそう。
駅の線路は高校に敷こう。
線路の石の色も、色とりどりにしよう。
ホームにいる人は、自分だけのチケットを持っている。
描きたいものを思い浮かべていると、自然と早歩きになって、息が切れていた。
学校へ続く200メートルの坂道。今日は足に力があった。
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