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「ワシは、東から西への渡し、ですわい」
「すると、帰りは、西から東への客をとる、儲かる日だな、新月は」
「とんでもねえ、帰りは客ナシ、空渡し、精のないこと、このうえなし、これ、掟でさあね、はて、旅の人、ヌシゃ、どこから来なさった?」
「オレか、北の海だ、波にさらわれ、潮に流され、着いたところが、この島だ」
「流れつくのは、たんと、おる、半島からは西の浮島、列島からは東の浮島、にな」
そのとき、西から東に渡る船が、近づいてきた。六人の老若男女が、土産物をどっさり買い込んで、満面に笑みを浮かべていた。
「楽しそうだ、満足しておるな」
「そりゃ、そうですわい」
船頭が応じた。
「見なされ、ヌシには、初めてじゃろうが、ほれ、みな、腰に縄を巻いておろうが」
「フム、巻いた縄から、細縄が垂れておるな」
「結繩じゃ、結び目が、いくつも、ついておるじゃろが」
「たしかに」
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