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二つの浮島
はるか遠いむかし、対馬の沖に、二つの浮島が誕生した。
二つは、不思議な動きをした。
西の浮島は、右回りに自転し、半島ぞいに北上、やがて東に回りこむ。東の浮島は、左まわりに自転し、列島ぞいに北上、やがて西に回り込む。こうして、二島は、月の満ち欠けに合わせ、洋上を循環した。
やがて、地殻変動の影響下、東と西から相互に回り込む二つの浮島は、ちょうど新月の日に、対馬の真北数キロで鉢合わせし、干満の十二時間、数百メートルの間をおいて、対峙するようになった。
東の渡し
「それが今日だと、いうのか?」
前方を見すえたまま、旅人が訊いた。
「そうじゃ、旅の人」
船頭が答えた。
「御覧なされ、西の浮島にも、東の浮島にも、ほれ、たいそう賑やかな市が、三日市と呼びまする」
「ん、渡しも、賑やかそうだ、ウヌは、どっちの船頭だ、西か、東か?」
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