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ある日僕は男らしいスーツ姿で夜、麗をレストランに誘った。
麗が、
「瑠樹が、こんなオシャレなレストランに私を誘うなんて珍しいね!」
と笑顔で話してくれた。
また麗はこんなことも話してくれた。
「瑠樹のスーツ姿、男らしくてかっこいいね!」
僕は男らしく見られることはあまり嬉しくなかったけれど、この日は笑顔を絶やさないようにしていた。
レストランで食事を終え、僕は麗を夜景のきれいな公園に連れ出した。
僕が緊張して口数が少なくなると麗が、
「瑠樹、どうしたの?」
と声をかけてくれた。
僕は麗に大切な話しをした。
「麗、僕はいつも麗に助けられてばかりで頼りない男だけれど、麗のこと一生大切にするから僕と結婚してください。」
すると麗が、涙を浮かべて答えてくれた。
「こんな私でよかったら、よろしくお願いします。」
さらに麗は話を続けた。
「瑠樹は、女の子になる夢を捨てたの?
私は嬉しいけど、瑠樹は本当にそれで良かったの?」
僕は今の自分の気持ちを、麗に正直に打ち明けることにした。
「僕は男らしくできないと思う。
でも僕は麗と一緒にいる時間が、僕にとってかけがえのない大切な時間だということに気が付いたんだ。
だから女の子になる夢をあきらめてでも、麗と一緒になりたいんだよ!」
麗はさらに涙を流して、僕に抱きついてきた。
「瑠樹、ごめんね。
瑠樹の夢を私が奪ってしまって!」
僕は麗を優しく抱きしめて答えた。
「気にしなくていいよ。
僕は大切な麗を失いたくないよ!」
麗と抱き合ったのは、実はこの時がはじめてだった。
僕は麗の体のぬくもりを感じながら、麗を一生大切にしようと、あらためて自分自身に言い聞かせた。
この日麗と僕は、きれいな夜景を見ながら時間を忘れて結婚後の2人のことを楽しく語り合った。
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