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麗と僕が27歳になった頃、僕はそろそろ家庭を持って落ち着きたいと考えるようになっていた。
その時、僕の脳裏に浮かぶのは麗の存在だった。
自分は女の子だと思っている僕にとって麗は恋愛対象ではないと思っていたけれど、でも僕にとって麗はなくてはならない存在になっていた。
麗と一緒にいる時間は、なぜかとても安心するし、異性を好きになる感情とは違うかもしれないけれど、麗のことを好きという気持ちは持っている。
僕は女性ホルモンを摂取して性転換手術もして女性になる道も考えていたけれど、この点については麗から反対されていた。
僕は今でも女の子になりたいという気持ちを持っているけれど、この願いをかなえることで自分は幸せになれるのだろうかと思うようになっていた。
麗は僕がトランスジェンダーであることを知りながら、僕のことを親身になって心配してくれて支えてくれている。
僕は麗がいなかったら、今の自分はないと思うほどだ。
僕は麗の反対を押し切って女の子になる夢を果たすのか、それとも麗の反対に従って男の子として麗との関係を継続するのかとても迷っていた。
麗は口には出さないけれど、僕に男の子に戻ってほしいと願っているはずだ。
僕は女の子になる夢を果たすと、自分自身にとって何か良いことがあるのだろうかと考えることにした。
女の子になる夢を果たすと、たぶん僕は大切な麗を失うことになるだろうと思っていた。
麗と一緒にいる時間は楽しくて、僕は麗からたくさん元気をもらっている。
それに麗は高校の頃からいつも僕のことを心配し、また僕の気持ちをとても良く理解してくれる、僕にとってはなくてはならない大切な存在だとわかっている。
こんなにも僕のことを心配して僕のことを助けてくれる存在は、世界中探しても麗だけだろうと感じていた。
だから僕は自分の夢を果たすことよりも、麗という大切な人を失うことのほうが、よほど辛いことだろうと感じていた。
僕は少しずつ女装する機会を減らしていった。
このことは僕にとって、とても辛いことだった。
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