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大学を卒業して麗は東京都内の旅行会社に就職し、僕は自動車製造メーカーに就職した。
会社に出社するときは、男性のスーツ姿で出勤するため、僕は会社に行くことが苦痛になっていった。
麗とは社会人になってもお付き合いが続いていて、僕が会社に出勤することが苦痛だということも理解してくれた。
そんなある日、麗が転職について僕にある会社を紹介してくれた。
その会社は家具の販売メーカーで、LGBTの人を積極的に受け入れているという話だった。
その会社の取り組みというのは、例えば男性と女性の制服を分けずに一緒にしていたり、お手洗いを男性と女性に分けずに共用にしていたりしている。
このような取り組みを行っている会社は、日本国内でも少しずつ増えてきているようだけれど、まだまだ十分ではないと僕は感じている。
会社に入社してから僕は3年程頑張ってみたけれど、とうとう男性の服装で会社に出勤することが辛くなり転職を決意した。
LGBTに理解のある会社を探したけれど、結局麗が紹介してくれた家具の販売メーカーに就職することになった。
その会社に出社するときは、僕は女性の服装で会社に行ったけれど、会社の他の従業員は女装している僕のことを気にすることはなく普通に接してくれた。
色々な面で、その会社は僕にとって働きやすい環境だと感じるようになった。
女の子になりたい僕の思いは年を重ねるごとに強くなっていって、僕は女性ホルモンを摂取したいと思うようになった。
このことも麗に相談したけれど、これについては麗は反対の意見だった。
その理由は、女性ホルモンを摂取すると副作用が起きる可能性があったり、海外の研究機関では癌になる可能性があると発表されているからだった。
「瑠樹、女性ホルモンの注射は、よく考えてほしい…」
麗からの意見に僕は女性ホルモンの摂取を考えさせられることになった。
麗の言うことは正しくて、女性ホルモンの摂取について僕なりにもう一度考えてみたけれど、僕にとって麗から言われた意見は重たかった。
それは、麗は僕のことを親身になって心配してくれているからだと思うからだ。
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