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しばらくしてドアをノックする音が聞こえた。明るく大きな女性の声が部屋の中に入ってきたようだ。ザイードが言っていた、アミラに違いない。
「マァム、お加減はいかかがですか? まだ固形物は食べられないと伺ったので、野菜スープとバナナジュースをお持ちしました」
色鮮やかな花柄のワンピ―を着た、割腹の良い中年女性が頭上に現れた。
「さあ、体を起こしましょうね」
ふかふかの枕に上半身を委ねると、美味しそうなスープの匂いが漂ってきた。ベッドの上で食事をするなんて、まるで外国の映画の主人公ようだ。澄んだ黄金色のスープを一口飲む。
「美味しい!」
ずっと食べていなかったせいか、味覚が敏感になっている。肉の臭みも全くしないし、塩味が薄いせいで上品なコンソメがより際立っている。ありきたりに見えて、その実すごく贅沢な一品だと思えた。
豪華な部屋に贅沢な食事……本当にここは何処なのだろう。
「ここは病院ではないようですが、一体何処なのかしら?」
花瓶の花を活け直しているアミラに聞いてみた。
「マァム、ここはザイード王子のお屋敷です」
ザイード王子?
まさか、さっきここにいた男性は王子様なの?
でも、何処の国の?
「お、王子様って、失礼だけど何という国の王子様なの?」
助けられた身の上でそんなことも知らないなんて、失礼極まりない奴だと思われただろうか?
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