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ところが、どうやらそんな風に思われていないらしい。アミラはにっこり微笑んで教えてくれた。
「アリ=マジャール国です。ザイード様は、アミール(君主)・ムハンマドの第二王子に当たるお方です」
アリ=マジャール国?
アミール・ムハンマド……アラビア半島にある国なのだろうか?
初めて聞く名前に戸惑いの色が隠せなかった。
「知らなくても仕方がありません。本当に小さな国ですから、外国の方には馴染みがないのでしょう。マァムは日本人だそうですね。日本も小さいけれど、非常に優秀で豊かな国だと聞きました。アリ=マジャールと違って有名ですものね」
人の良さそうな目を輝かせて、アミラはウインクをした。イスラムの女性は顔をベールで覆っているイメージがあるが、彼女の服装はどの国でも見かけるような格好だった。
「部屋の中では服装は自由なんですよ。ヒジャブやニカブを被るのは、公の場に出る時だけです。日除けの機能も備えていますしね。家の仕事をする時は、作業の邪魔になるだけですから」
茶目っ気たっぷりなアミラの答えは、アラブ社会の奥深さを感じさせる。
「また少しお休みになって起き上がれるようになったら、ザイード様に申し伝えましょう」
幼子をあやすようにアミラは枕を整え、私の体を横たえた。
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