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「今はまだ何も考えては駄目ですよ。あなたには休息と栄養が必要です」
またウインクして部屋から出ていった。彼女の見立てに寄ると、回復にはまだまだ時間がかかるらしい。ザイードに事の顛末を聞きたいが、空腹が満たされ瞼が重くなってきた。
「何時間寝ても足りないみたい」
私の傷ついた心と体は、休息を求めているようだった。
目覚めてから丸四日間は、過保護なアミラに甘やかされて過ごした。
「マァム、疲れた体にはデーツとミントティが一番です」
デーツというナツメヤシのシロップ漬けと甘いミントティは、麻薬のように私の体に染み込んでいく。これを毎日取り続けたら、十キロ増加なんてあっという間だろう。
「頬もバラ色になって、すっかり調子が戻ったようですね。これならいつでもザイード様とお話ができそうです」
何もしなくてもよい心地好い時間から、一気に現実に引き戻された。私やジェーン達に起こったことを知りたいが、真相に迫るのを拒んでいる自分がいる。
ザイードの話し振りからも、楽しい話ではないことは伺えた。耳を澄ますと、あの時のジェーンの叫び声が聞こえてくるようだった。
ベッドから起き上がり、窓際まで数歩進む。ここまで歩くにも、まだ息が切れてしまう。それでも窓の外の美しい庭園の花々は、見るだけの価値があった。
砂漠の国を連想したが、ここアリ=マジャールは緑豊かな国だった。屋敷の向こう側には、目に眩しいほどの肥沃なオアシスが広がっている。
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