(二)

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「変だわ。エマとジムがいない! この人も、こっちの人も、この人も、私は知らない」  手元にあった十一枚の写真を何度も繰り返し見て確認した。ところが、何故かエマとジムの写真だけない。 「どうして? どうして彼らだけ難を逃れたの? あの晩ずっと一緒にいたのに……」  モデルのように美しいエマの姿が脳裏に浮かんだ。性奴隷という言葉を聞いた時、真っ先に彼女の身を案じた。  それなのに、彼女は難を逃れていた。一体それはどういうことを意味しているのだろうか? 「エマは赤毛の美人だったのよ。顔だけじゃなく体型だって完璧だった。本人はモデルだと言っていたけれど、その辺りのことは詳しく教えてくれなかった。ジムもコーンウォール州の貴族出身らしく、気品あるハンサムな男性だった」  それなのに他の人達を差し置いて、奴隷商人が逃がすような真似をするだろうか?  見た目だけを優先させるなら、恐らくエマとジムは誰よりも一番高値が付くだろう。その二人が被害に遭っていないとなると…… 「コーンウォールの貴族か……」  考え込むような様子で、ザイードは目を閉じた。そして、思いついたように話し出した。
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