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「その二人の特徴を、もっと詳しく教えてくれないか。もしかしたら、彼らは手引きをした側の人間かもしれない」
実に嫌な解釈だった。だが、今そう考えるのは妥当なことだとも思える。二人の行動には些細だが、不可解なことがあったからだ。
「これだけ世の中にSNSが浸透しているのに、いつもカメラレンズを向けられると絶対に避けていた。ずっと妙だと思っていたけど、まさかこんな理由があったなんて」
そう言えば、あの時!
送迎会の晩にエマとジムには内緒で、二人を隠し撮りしていたことを思い出した。スマートフォンやカメラだとばれてしまうから、ちょっと旧式な代物で撮影していたのだ。
「私の携帯電話は何処にありますか? 旧式の二つ折りの品で、目覚まし時計代わりにいつも持ち歩いていました。ジーンズのポケットに入れたはずだけど、もしかしたら処分されてしまったかしら?」
「君の所持品は、ここにあるので全部だ。パスポートや金目の物は一切なく、スーツケースもなかったそうだ」
ザイードがあの日着ていた擦り切れた衣服と、真っ二つになった黒い携帯電話を差し出した。
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