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「うぁ、見事に折られているわね。でも……」
震える手で壊れた携帯電話を分解する。
「良かった、あった! ここまで彼らはチェックしていなかったようね。メモリーカードを入れて、データは全て保管していたんです」
小さなメモリーカードをザイードに手渡して、訴えかけた。
「小さいけれどエマとジムが写っているはずです。これで参考になると良いのだけれど」
隠し撮りした数枚の写真に望みを託す。
「他に大事なデータは入っていないか? データ保存をしたらすぐに返すよう、部下に伝えておこう」
大事な記憶はたくさん残されている。特に家族との大切な思い出が。でも、その思い出をもう一度見ることは、今の私にはできない事情があった。
「お気遣いありがとうございます。大事なメモリーカードなので、取り扱いには注意してください」
思わず涙声になってしまった。不意に眉間にしわを寄せ、ザイードが私の顔を見つめた。
「こんなことに巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。君も早く日本に帰りたいだろう」
今ここで彼に話せたら、どんなに気持ちが楽になるだろう。私を知らない第三者に、私の孤独を打ち明けたら……そう考えただけで、止めどなく涙が溢れてきた。
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