(二)

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「うぁ、見事に折られているわね。でも……」  震える手で壊れた携帯電話を分解する。 「良かった、あった! ここまで彼らはチェックしていなかったようね。メモリーカードを入れて、データは全て保管していたんです」  小さなメモリーカードをザイードに手渡して、訴えかけた。 「小さいけれどエマとジムが写っているはずです。これで参考になると良いのだけれど」  隠し撮りした数枚の写真に望みを託す。 「他に大事なデータは入っていないか? データ保存をしたらすぐに返すよう、部下に伝えておこう」  大事な記憶はたくさん残されている。特に家族との大切な思い出が。でも、その思い出をもう一度見ることは、今の私にはできない事情があった。 「お気遣いありがとうございます。大事なメモリーカードなので、取り扱いには注意してください」  思わず涙声になってしまった。不意に眉間にしわを寄せ、ザイードが私の顔を見つめた。 「こんなことに巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。君も早く日本に帰りたいだろう」  今ここで彼に話せたら、どんなに気持ちが楽になるだろう。私を知らない第三者に、私の孤独を打ち明けたら……そう考えただけで、止めどなく涙が溢れてきた。
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