プロローグ

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「ノォーッ!」  耳をつんざくような叫び声が響き、私は目覚めた。あの声の主は、インドのゲストハウスで一緒だったジェーンに違いない。彼女の身に何が起きているの?  慌てて起き上がろうとしたが、思ったように体が動かない。頭の中は霞がかったようにぼうっとしている。ジェーンだけでなく、私にも何かがあったらしい。それより、ここは何処だろう? 「オゥ、ノー! オゥ、オゥ、アァ......」  最初の聞こえた恐怖を示す叫びが、やがて喘ぐような吐息に変わっていく。ガシャガシャと金属がきしむ音が、リズムを刻むように一緒に聞こえてくる。  一体何が起こったの?  一体ここは何処なの?  鈍くなった頭をフル稼働しても、何も思い出せなかった。いいえ、何も思い浮かばなかった。  窓もなく薄暗いジメジメとしたコンクリート壁の部屋。重い扉にある小さな隙間から、廊下の灯りが漏れてくる。目を凝らして奥を見つめると、何か黒い塊が動いた。  もしかしてあれは…….
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