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ただ泣きじゃくる私の頭を、大きくて温かな手が撫でた。ザイードがベッドに横たわる私の枕元に腰かけていたのだ。褐色の男らしいごつごつとした手の温もりに、私は子度の頃に戻ったような安堵した気分になった。
「どうして君はそんなに痩せ細っているのかい? まるで何ヶ月も食事をしていないような、骨と皮だけじゃないか。だから君は少年と間違われたんだよ」
父親が娘を諭すような優しい口調が、更に張り詰めた心を解きほぐす。思わず声の主の顔に、助けを求めるような視線を向けた。
真っ黒な豊かな巻き髪が覆うその顔には、誰も寄せ付けないような厳しさがあった。髪と同じ黒い豊かな眉の下には、漆黒の闇のように深い瞳が輝く。
大きくて高い鷲鼻に、ふっくらとした厚めの唇を真一文字に結び、何か考え事をしているようだった。決してハンサムとは言い難いが、印象深く忘れられないような魅力を秘めている。
「髪の毛もショートだから? だからあの子供達と同類だと思われたの? それなら別室にいたジェーンや、他の女性達はどうなったの?」
必死に涙を拭いながら、再度質問を投げ掛けてみた。
「君は私の質問に答えていないよ。ずっと点滴で栄養を取っていたけれど、何か食べないと回復も遅くなる」
心から心配しているような優しい口調だった。でも、私は助かったのだ。これ以上不安な気持ちにならないよう、みんなの安否を教え欲しかった。
「ずっと体調を崩していたからよ。それに、その前からあまり食欲がなかったから」
表面的に私は答えた。本当の理由はもっと複雑で、悲し過ぎて今は話したくなかった。
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