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「アジアの女性は比較的小柄で細身だが、君は痩せ過ぎのようだ。もっと太った方が良いと思う。あと十キロほど太ったら、もっと美しくなる」
こんな状況でそんな話をされて戸惑うばかりだ。しかも、こんな近くで、こんな魅力的な男性に。有り得ない言葉の裏を考えてしまい、急に彼の存在を意識してしまった。
「アミラに何か用意させるから、まずは食事を取りなさい。また少し休んで落ち着いたら、君の話をじっくり聞こう」
有無を言わせないような強い口調で、彼は私を納得させた。今も、今までも、ずっと食欲なんか湧いてこなかった。でも、そう言ったら小さな子供のようにお仕置きされるのかしら?
ぼんやりとそんなことを考えていたら、私の頭のてっぺんにそっとキスをして、ザイードは部屋を出ていった。
「しまった! ここは何処で、彼が何者か聞くのを忘れてしまったわ」
ザイードのキスに動転し、聞くべきことを忘れてしまった。この大きくて頑丈なベッドは旅行中に宿泊した安宿とは違い、あんな大柄な男性が腰かけても沈むことはなかった。
彼が座っていた辺りには、ジャスミンの花の香りが残っていた。
あの調子ならザイードはまたこの部屋を訪れるだろう。普通の状態でない頭をフル稼働しても、今はまだまともに話をする自信がない。あんな強烈な印象の男性に、今まで出会ったことがなかった。
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