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Ⅱ.兄ちゃん
確かに俺の勇者への憧れは、この村からすればマイノリティであることは間違いない。だが別に俺は逆張りしている訳じゃあない。昔出会った勇者の兄ちゃん――いや当時は違ったが――の存在が大きい。
先にも言った通り、この<カイズ村>では屈強な男児が生まれがちな土壌がある。そのご多分に漏れず、俺は特に強靭な体躯を持って生まれた。
「なんて腕力だ! デルガドは今にとんでもない戦士になるぞ!」
「この村始まって以来のSSR戦士かもしれないぞ!!!」
大人たちは皆一様に俺に期待をかけている。
そんな俺とは真逆に全く期待をされていない男がいた。それが近所に住んでいた2つ歳上のアルマルディだった。俺は幼少時から仲が良く『兄ちゃん』と呼び慕っていた。
しかし兄ちゃんはこの村の男としては小柄だった。それに線も細い。だから村の大人達からは冷遇されていたが、兄ちゃんには靭やかな身のこなしからなる独特の剣術があったため、何とか戦士コースには残ることが出来ていた。
「いっそ僕なんて、戦士コース外してもらったほうが楽なんだけどね」
兄ちゃんはいつもそう言って笑っていた。歳上なのにまるで歳下のように無邪気な笑顔で。
屈強な手前、厳つい容姿になりがちなこの<カイズ村>の男にあって、兄ちゃんのルックスは爽やかで格好良かった。少なくとも俺はそう思っていた。
兄ちゃんと会った後、家に帰って姿見の前に立つと俺はなんて無骨なんだと思ったりもした。まあこの村では俺のような見た目のほうがモテるんだが。
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