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妻に会える、とぼくは興奮した。
たった一時間とはいえ、死んだ人間を蘇らせてくれるなんて。神さまだか、誰だか知らないけれど、すごく粋な計らいだ。
夕暮れどき、からだが実体化して、ぼくは駅前の噴水のある公園のベンチに座っていた。
生きていたころ、よく着ていたみず色の半そでシャツと黒いチノパン、黒いスニーカーという格好だった。
今も妻はあの喫茶店をやっているだろうか?
ぼくが死んでから、どのくらい時間が経ったのか分からない。そんなに経っていないようにも、数十年が過ぎたようにも思える。
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