ショパン、ドビュッシー、ラフマニノフ

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「でもさ、あくせく働かなくてもいいね」 「わたしは働きたいの」 「楽をすればいいのに」 「そういうの、嫌なの」 「しっかり貯金してる?」 「寄付しました」 「寄付?」 「ほらっ、一郎さん、いつかニュースを見て、話していたじゃないの?もし余裕ができたら、犬猫の保護施設を応援したいって」 「あっ、言ったかも」 「だから、そうしました」 「いくら?」 「八千万円」 「ぜんぶ?」 「はい」 「信じられない」 「わたしも」 ぼくは、笑いがこみあげてきた。 とても妻らしいと思った。 「馬鹿だねぇ」 「そうですか?」 「馬鹿だよ」 「でもね、一時的とはいえ、たくさんの犬猫の命が助かったかもしれないわ」 「まぁね、それはそうだ。ぼくも無駄死にではなかったってわけだ」 「よく考えた上で、わたしは決断しました」 「そっか、それならそれでいいか」
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