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「驚いた?」
「ハハハ」と笑うと彼は待ったアピールを普通にしてきた。「いやいや、待て。なんで家を知ってんだ。」と聞くと「飯田に教えてもらった。」と言う。
飯田和徳。私が小6で告ったという男子の名前が出てきた。「嘘…かず…」蓮には聞こえなくらい消えそうな声でそう呟いた。言わないでほしかった。あの子のことだからわざとじゃない。コイツの異常さに気づいていないだけ。そうだ。
「公園行こうよ。」
「いい。」
蓮より速く歩いて学校につかないと。嫌な予感がする。とは言っても同じ陸上部の仮入部員なので、方角は一緒だが、人がいるだけマシなはずだ。私は急ぐ。無言で歩く。歩いて歩く。緊張と疲れで汗が体を伝い始めた時だった。
「さゆり!待てよ。」
肩を掴まれる。その力は思ったより強く、怖くて体に力が入らなかったので「痛い!」と振り払う。きっと、今逃げても無駄だろう。どうせ運動不足の私は男になんて勝てっこない。男に生まれたかった。そしたら、こんな事気にせずに過ごせるし。それに周りの目を気にせず男友達といれる。もういいや。私は微笑むと、
「今日は早く学校に行きたいから。ごめんな。入部届提出したい。」
と優しく蓮の手を下ろした。「そうか。」とうなずくと、何も言わず着いてきた。ぶっちゃけ今のは嘘。逃げれる自信がなかったからついた嘘だ。蓮が陸上部を選んだ理由は知っている。蓮は私のことが好きだから。本人曰く、一目惚れらしい。一目惚れ?どうせ露出だろ?
私の周りはそうだ。露出しとけばみんな好きになる。けれど危険を伴う。こんな事が起きるのは中1から急に増えた。学校につくとグラウンドに人影はなく、不運なことに2人きりになってしまった。
「顧問の先生、いないねぇ。」
蓮の上ずった声は再び私を震えさせた。
「せやな。探すわ」
そういうと力ずくで校舎の裏へと連れて行かれた。「なにしてんの!」と言うが「いいや?」と言うだけで何とは言わない。助けて。
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