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そう言いながらリッカがテーブルに手のひらを置くと、ちまっとしたサイズのゴーレムがリッカの手によじ登り始めた。
「このゴーレムは、小さいですが力持ちなんですよ。小麦や砂糖なんかの重たい袋も軽々運ぶことができます」
リッカが紹介すると、ゴーレムはコクリと小さく頷いた。そのままリッカの手の上で、まるでパントマイムをするように全身を使って荷運びの真似をする。その微笑ましい様子にラウルは思わず相好を崩す。しかしエルマーは険しい表情を崩さない。
「お嬢さん、このゴーレムは一体どういう仕組みになっているのですか? 力が強いとのことですが危険はないのですか?」
オリバーの問いにリッカは小首を傾げる。
「この子はわたしの魔力で動いています。わたしが命令しない限り人を襲ったりはしませんよ」
ゴーレムはリッカの掌からピョンと机に飛び降りると、まるで自分は危害を加えませんと示すように両手を上げてバンザイのポーズをしてみせる。そんな様子にオリバーは訝しげな表情になった。それをラウルが宥める。
「まぁまぁ、ギルド長。見た目もこんなに可愛らしいし、リッカちゃんが大丈夫というなら、危険なものではないのでしょう」
ラウルが全く警戒心を示さないので、オリバーは納得していない様子ながらも渋々頷いた。
「それでお嬢さん。これをラウルさんの店で使って欲しいとは、どう言うことですかな?」
オリバーは改めてリッカに問いかける。それに対してリッカは小さく頷いた。
「あの……、実は前にお手伝いをさせて頂いた時に思ったんです。随分大変そうだなと。それで、ラウルさんのお店に何か役立てる方法がないかとずっと考えていたんです」
「それはありがたいことだけど」
リッカの説明にラウルは申し訳なさそうな表情になる。しかし彼女は構わず自分の考えを語り始めた。
「ラウルさんのお店にはもう少し人手が必要なんだと思うんです」
「それはそうなんだけど、なかなか人を雇う余裕はなくてね」
ラウルが苦笑いを浮かべながら、頭を掻く。リッカはそんなラウルにゴーレムを指し示す。
「そこでこの子です。力持ちのこの子なら、ラウルさんのお店で荷物運びや店内掃除のお手伝いができるんじゃないかと思ったんです。本当はわたしがお手伝い出来ればいいのですけど、工房の仕事もありますから、流石にそれは無理で……」
リッカの言葉にラウルは少し驚いた顔をする。それからしばらく思案顔でリッカのゴーレムを見ていた。
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