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ゴーレムはまるで自分を雇ってくれとアピールするようにテーブルの上からラウルに向かって自己主張している。その動作がなんだか可愛らしくてラウルは思わず笑みを漏らした。
「……正直なところ人手は欲しいんだ。本当に手伝ってもらえるのなら、助かるけど……」
ゴーレムの様子を見ながらラウルはそう呟いた。リッカは自分の提案が受け入れられたことに嬉しそうな表情になると、ゴーレムをヒョイと抱き上げる。ゴーレムも嬉しそうに両手を万歳していた。
「良かった! それではこのゴーレムの派遣も含めて契約しましょう!」
「いやでも……」
そこでラウルは言い淀み、ポリポリと頭を掻く。そして意を決したように口を開いた。
「人手は正直必要だけど、この子は……」
「やっぱりダメですか?」
「あっ、いや別にリッカちゃんのゴーレムが悪いって訳ではなくてね。うちの店だとちょっと無理かなって」
「どうしてですか?」
要領を得ないラウルの言葉をオリバーが補足する。
「ラウルさんの店は飲食店ですからな。土人形ですと衛生面で少々問題があるかもしれませんな」
二人の反応にリッカは肩を落とす。
「そうか……そうですよね……衛生面ですか……」
リッカは小さくため息をつくと、抱き上げていたゴーレムをテーブルの上に降ろした。
「……衛生面か。確かに、飲食店で土はいただけませんね。……土の代わりになる何か別の素材……」
ブツブツと呟きながらリッカは考え込む。その様子にラウルは慌てて声をかけた。
「待って。もしかして、君のゴーレムは土以外の素材でも作ることができるの?」
「はい。土以外で作ったことはありませんけど、形が保てるくらいの強度があるものでしたら可能かと」
リッカはあっさりと答える。そんなリッカにラウルは目を見開いた。
「……それならうちの店で働いてもらうことができるかも」
「えっ?」
リッカが驚きの声を上げる。ラウルは嬉しそうに笑った。
「小麦粉だよ。生地をゴーレムにすることはできないかな。小麦粉人形ならスイーツ店で働くにもぴったりだ」
ラウルの提案にリッカは目を輝かせた。
そんな二人の様子をオリバーは興味深そうに見ていた。そして、コホンと一つ咳ばらいをする。その音にラウルとリッカはハッと我に返ったように姿勢を正した。
「……それで? 契約はどうなさいますかな?」
オリバーの問いかけに、ラウルとリッカはお互いの意思を確認するように顔を見合わせた。そして二人同時に頷いたのだった。
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