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情報がたくさん入ってきて、考えをまとめながら彼を見つめていると急に私の腕からパッと手を離す。
「ごめん、痛かったよな。・・・あと、無理に住めとは言わないから」
今度は私が慌てて彼の腕を掴む。この人は悪い人ではない気がする。
「あの、お願いします。ここに住まわせてください」
私が力強く言うと、彼は瞬きを二回したあと頷いた。そしてソファ近くのローテーブルの前に座る。目で促され私も彼の向かいに座った。
すると彼はテレビ台の引き出しからカードケースのような物を取り出す。そこから出てきたのは名刺だった。
「・・・自己紹介まだだよな。俺は大田一哉という者だ」
手渡された名刺には【修理屋大田 店長 大田一哉】と書かれている。店長さんなんだ。
名刺から大田さんに視線を移し、私も自己紹介した。
「私は愛野桜花と申します。よろしくお願いします」
「よろしく。えっと、愛野さんは・・・」
「あ、桜花でいいです。その方が慣れてるので」
「じゃあ俺も一哉で。それでさっきから俺、タメ口で喋ってしまっているんだが。年齢聞いてもいいか?」
不安げに上目遣いで聞いてきた。私は聞いても大丈夫ですという意味で微笑んで答える。
「25歳です。別に年下でもタメ口でいいですよ」
「そうか。でも俺28だからこっちが年上か」
そうなんだ。若く見えるから私より年下かと思った。
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