94人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「うわ、あっつ・・・。梅雨の時期とは思えない」
飛行機から降りた私は日本の暑さに思わず声を上げ、顔をしかめる。
数時間前までいたフランスとは違う梅雨独特の暑さ。
スーツケースを手に取りリュックを背負って空港を出る。そしてバス乗り場で時刻表で時間を確認。
「あと15分で出発か」
正直、タクシーで行きたいが所持金が残り少ない。バスに乗り込み、出発まで大人しく待つ。
バスが出発して流れる景色をぼんやり眺めながら実家にいる両親のことを思う。
高校卒業後、夢を叶えるためフランスに向かった娘を文句一つ言わず応援してくれていた。電話で帰ると伝えたとき、沈んでいた両親の声を思い出す。
目に涙が浮かんできて見ている景色が滲む。慌てて目元を拭い、顔ごと窓に向ける。
しばらくすると懐かしいバス停の名前を聞き、ボタンを押して降りる。
バス停から実家までは歩いて10分程で到着する。第一声はなんて言おう。ただいま、だよね。
そんなことを考えながら実家に到着したのだが、私は呆然とする。
「え、どういうこと・・・?」
玄関の扉に空き家の張り紙が貼られていた。
最初のコメントを投稿しよう!