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私は汗を拭うこともせず辺りを歩き回りながら、スマホを耳に当てていた。
前者は私が実家の場所を間違え何処かに愛野の表札がかかっているだろうと。後者は両親は何処かに引っ越してしまったのではないかと確認するため。
スーツケースをガラガラと引きながら歩いていると電話が繋がりお母さんの声がした。
『もしもし』
「もしもし!お母さん達、今何処にいるの!?」
『私のお母さんの家よ。桜花のおばあちゃんの家』
「私、帰るって言ったじゃん。何で教えてくれなかったの?あと、今お母さん達の家の前にいるんだけど何で空き家なの?」
私の矢継ぎ早の質問にお母さんはため息をついた。
『私、ちゃんと桜花に伝えたわよ。おばあちゃんの介護しないといけないからこっちに住むって』
伝えた?いつ?立ち止まって考える。まさか、向こうでバタバタしてたとき?
・・・あ、そうだ。お母さんから電話あった。おばあちゃんの所に行くことになったって言ってた気がする。
「・・・言ってた。忘れてた。ど、どうしよう!私、もうお金無いから、そっちに行けない!」
お金も住む所もないと気付きパニックに。そしてそのショックからか頭もズキズキと痛くなりはじめた。
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